酒とお酒は相性抜群
 山梨の勝沼にある「ぶどうの丘」は、温泉好きの呑んべえにとっては天国。この施設にある温泉施設の名前が「天空の湯」なので、まさしくって感じ。


 
 JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅に降りると、目の前の開けた風景の先にそびえ立つ「ぶどうの丘」。駅前にいるタクシーに乗って約5分で到着。



 さっそく、地下にあるワインカーヴ(ワイン貯蔵庫)へ。


 
 甲州市推奨の約170銘柄・約2万本のワインが揃っていると豪語するここでは、2,200円でタートヴァン(試飲カップ)を購入すれば、全てのワインを自由に試飲できる。

 

 呑兵べえを自由に飲ますとろくなことはない。試飲といえども数をこなすと完全に酔っ払いだ。ここは自重してお昼のメインイベントへ。おっと、その前にひとっ風呂。というか、ビールを美味しく呑むための儀式だ。

 
 
 「天空の湯」は「甲府盆地・御坂山塊・南アルプスを一望する露天風呂は四季折々の風の香りと一緒に、疲れを癒す」とホームページで謳っている通り、眺めは抜群。
 

(ぶどうの郷公式ホームページより)

 泉質はアルカリ性単純泉。湧出量は日量200トンで、泉温は約38度〜40度。呑む前のウォーミングアップには最適。



 すぐ横にある「バーベキューガーデン」も、とにかく眺めがいい。



 眺めを見ながら湯上りのビールだけで満足してしまう。



 とはいいつつ、肉、肉、野菜、肉、肉。



 泊まりは塩山温泉「宏池荘」。



 地元の共同湯としても機能している浴場は、沸かし循環だが、源泉風呂もあって交互浴が楽しめる。泉質はアルカリ性単純温泉。湯温は加熱があ41度くらいで、源泉風呂が25度くらい。向かいにある自炊宿「井筒屋」のほうが、循環していないのでが湯がいいが、今回は旅館タイプのこちらにした。



 てっきり、宿で夕食かと思いきや、夜は徒歩1分もかからない所にある居酒屋「赤ちょうちん」へ。何を食べても旨い、安い。山梨では珍しくない湯のみで呑む「湯のみワイン」が、旨すぎて湯のみが進む。矢作洋酒ワイン。反則やろコレ。

 そんなこんなで、湯より呑むがデフォな自堕落温泉マニアであった。

(温泉呑んべえ)
2023.06.30 23:58 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉旅 | com.gif コメント (0)
甲府で三杯三湯
 山梨県甲府市。温泉好きにとっては馴染みの街である。甲府には街中に温泉銭湯がたくさんあり、そのどれもが個性的。源泉ぬる湯も楽しめる「新遊亀温泉」「国母温泉」、熱湯の「草津温泉」、ぬるすべの「山口温泉」、ざぶざぶかけ流しで洗い場の洗面器が流れていく「玉川温泉」などなど、一癖も二癖もある湯がそこら中に点在している。今までに何度も訪ねた甲府ではあるが、湯につかって一杯やるには使い勝手のよい街でもある。今回はまず、駅から徒歩十数分の所にある「喜久乃湯温泉」へ。



 外観こそは新しくて、よくある日帰り温泉っぽいが、一歩中に入るとそこは昭和の銭湯。創業は昭和元年。作家・太宰治も通ったという由緒ある銭湯で、泉質はカルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉で、源泉かけ流し。湯船だけでなくカランもシャワーも源泉使用で、源泉風呂もあるガチの温泉銭湯だ。浴槽、洗い場は昔ながらのタイル張り。脱衣所も木製木箱の衣服入れに広告看板も昔のまま。外観からは想像もできない昔ながらの雰囲気のギャップは、使い尽くされた陳腐な表現ではあるが、まさしく「タイムスリップ」感覚だ。


(神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合ホームペジより)

 2階には900円で利用できる大広間があって、飲み物食べ物持ち込み自由。というか、むしろ持ち込んで楽しんでくださいというお言葉通りの寛ぎの間。ここで、日がなのんびりしたいと思う欲求は抑えられない。近所だったら入り浸りかも。



 すぐ近くのバス停「朝日五丁目」から甲府駅を通り過ぎて「中央4丁目」で下車。徒歩5分くらいにある「若奴食堂 中央店」で湯上りの一杯。



 いかにも昼呑みができる佇まい。呑んべえは100%吸い込まれることだろう。



 昼時なので食事の人が多いが、昼呑みに興じる酔客もちらほら。モツ煮と瓶ビールでスタート。といってもこれから先はまだ長い。追加はハイボール一杯にして、小一時間でおいとま。徒歩5分くらいの「都温泉」へ。

 

 昼下がりの温泉。さっぱりとした単純温泉で酒も抜けていく。



 甲府でお手軽に泊まるとなると、まずは茶色いお湯がどばどばかけ流しの「ホテル昭和」が思い浮かぶ。あとは「甲府昭和温泉ホテル」という手もあるが、どちらの湯も熱め。ぬる湯好きにとっては「湯王温泉ホテル」の一択しかない。



 甲府中心街からは、身延線の南甲府駅か甲斐住吉駅から徒歩15分くらいの中途半端な立地条件だけど、街中から伊勢町営業所行きのバスに乗って「住吉一丁目」で降りれば徒歩3分くらいでたどり着ける。バスも1時間に1本はあるので、街中へ呑みにいってこいするには問題ない。ほどよく加熱されたうす茶色の単純温泉。ぬるい源泉風呂でのんびり過ごすのもいいが、酒場がおいでおいでしているので、ひと風呂あびてから街に繰り出した。 



 甲府駅の南エリアには、古くからある飲み屋街がひしめきあっている。



 その一角にある「くさ笛」は昭和39年創業の甲府でも屈指の名酒場だ。



 路地を進むと縄のれん。横に長い出入り口を潜ると、御年83歳のおかみさんが出迎えてくれる。古くからあるので常連客主体の酒場ではあるが、よくあるなあなあな会話はない。親しみのなかにもきちんと距離を保って、それは一見さんにも同じ。だから、誰が訪れても居心地がいい。冷蔵庫に貼られたおかみさんの二十歳代の美人写真を見ていると、泡沫の夢のなかに迷い込んだかのような錯覚に陥る。今宵はここで酔いしれるのだ。



 また来てねという声に送られ、近くのジャズバーで締めの3杯。バスでホテルへ戻って、ぬるい源泉につかって夢から醒めた1日が終わる。



 翌朝は、甲府駅そばの朝7時半からやっている「稲荷屋」で朝食。「のり玉定食」は、最初にここを訪れたときは、ふりかけののり玉かと思ったが、今や定番。ようするに、卵かけご飯に海苔と小針がついた朝ごはんだ。



 甲府にはあと何回訪れるだろうか? 温泉銭湯もいくつかなくなり、飲み屋街も寂しくなっていくばかり。とはいえ、源泉が冷めない限り、夢から醒めることはないだろう。

(温泉呑んべえ)
2023.06.22 05:24 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉旅 | com.gif コメント (0)
高齢化が恒例化


 上野の東京美術館で開催されている「マティス展」へ。

 アンリ・マティスは、1869年生まれのフランスの画家。「色彩の魔術師」と称されるほど、印象的な色の中に芸術性を探求していった作品の数々。日本では2004年以来となる今回の展覧会では。代表作のひとつ「豪奢、静寂、逸楽」をはじめとした生涯にわたる軌跡が、まんべんなく網羅されている。点数が少なく物足らないところもあったが、目と心の保養となったのはいうまでもない。

 それにしても気になったのは、ピカソと双璧をなすくらいの巨匠の展覧会にしては空いていたこと。会期の半ばとあってなのか、雨交じりの天気だったからなのか? でも、実はある程度は予想していたことでもあった。

 以前、よく昼呑みをする大衆食堂が異常に空いていたことがあった。その店はなぜだか、爺さま婆さまが昼から呑んでいるたまり場で、いつ行っても満員に近い客の半数以上が爺さま婆さまたち。それがその日は彼らの姿がほとんどなかったのだ。そこでふと思いついたのが、その日は年金の受給日の直前。なるほど、そういうことか。娯楽施設でも年金受給日の前は、いつもより高齢者が少ないのはよくあるあるだ。

 美術館というと、ふた昔前、み昔前までは、空いているのが普通だった。モナリザやひまわりなどの世界的名画は例外として、ある程度名の知れた画家の展示会においても、館内はガランとしていて絵画の前に人が群がって、なかなか見られないということはほぼなかったくらい。ところが、バブルあたりから美術館は盛況になり、その客の多くは高齢者。リタイアして閑をもてあました人たちにとって、美術館は文化的で高尚な趣味の欲求を満たしてくれる格好の場所となった。その傾向は現在も続き、美術館の来訪者の高齢者率は高い。

 そんなわけで、年金受給日の前日に行けば、ひょっとして空いているのではないかと出かけた次第。その予想がズバリ的中したのかどうかは定かではないが、ともかく、人をかき分けるほどの入館者もなく、絵画の前でしばし見入ることもでき、久しぶりにストレスレスで美術館に滞在できた。

 そういえば、温泉の高齢化もかなりなもの。自分が若かったころも温泉といえばお年寄りが多い印象であったが、日々の疲れを癒すリゾートとしての温泉が定着している現在においても、宿泊客の爺さま婆さま率は高い。実際、日本自体が高齢化社会化しているわけだから、それも当然といえば当然ではあるが、今現在の高齢者である団塊の世代以降、温泉の主な顧客層が激減していくことは目に見えている。

 かつての社員旅行がなくなって、団体客の激減によって寂れていった温泉地も多々ある。鬼怒川や水上温泉のように廃墟宿が建ち並ぶ温泉街も珍しくもない。水上は客層を特化した宿で再建の兆しも見受けられるが、これからの温泉宿は、個別な嗜好を満足させることが必要になっていくかもしれない。

 近ごろの「ソロキャン」ブームのごとくソロ専用宿や、ペットと混浴できるアニマル宿。恋人たちのためのラブホ温泉とか、隠キャも泊まれる、食事は部屋の前にそっと置かれている引きこもり温泉とか、どう?

(温泉呑べえ)
値上げラッシュ


 天下一品。俗にいう「天一」は、ラーメン好きなら一度は食べたことがあるでだろう、全国的にも有名なチェーン店。「こってり」という名が通り名として浸透しているほどの、どろどろの濃厚な鳥骨スープが唯一無二なこってりラーメンは、全国のおすすめラーメンチェーンの上位にランクインする人気ラーメンでもある。

 天下一品の発祥は京都。京都といえば、ラーメンに関しても京料理に代表されるように薄味というイメージがある。出汁がきいた透き通ったスープに細麺、そんで、BGMには琴の音が流れるみたいな、いわゆる「京風ラーメン」。実際、ひと昔前の東京にもそういう類の店はあったが、現実の京都ラーメンはどちらかといえば濃い味が主流。老舗でいうと「第一旭」や、そのお隣の「新福菜館」などは、見た目も濃厚な醤油系スープだし、鶏ガラを煮込んだスープの「天天有」、背脂をふんだんに使った「ますたに」など、どれもが味が濃系のスープが売り。新規店においても、だいたいが濃い味を前面に打ち出している店が多い。
 
 なかでも、独特のどろっとしたスープが印象的なのが「天下一品」。1971年に屋台からスタートし、店主が味の開発を進めたのち、1975年に現在の京都本店の地に天下一品として創業。今や全国に222店舗も構えるラーメンチェーンになり、全国にこってり味の固定ファンも多い。じっくり煮込んだ鶏ガラをベースに野菜などを加えたスープは濃厚で、雑に言えば「どろどろ」。麺を持ち上げるとスープが絡みつくくらいで、スープを飲むというよりは食べるといったほうが適切かというくらい。その味は見た目通りの「こってり」だ。
 
 学生のころ初めて天下一品を食べたときは、ラーメンといえば中華そばといった中華系の醤油味がほとんど。当時、珍しいラーメンといえば札幌ラーメンくらいしかなかったこともあってか、今までにないラーメンの味に感激し、京都に住んでいたころは、ラーメンといえば天下一品というくらいの、天一好きになってしまっていた。そんなわけで、東京に出てきてからも、けっこうな頻度で天一に通っていたわけだが、その後に続々と新しい味のラーメン店が出現して、いつしか一大ラーメンブームが到来。いつの間にか天一にも足が遠のいていった。

 そんなつい先日、呑んだあとにたまたま前を通りかかった天下一品。小腹が空いていたこともあって、つい引き込まれてしまい、着席するかしないかでメニューも見ずに「こってり」宣言。何年ぶりだろうか? 確かコロナ禍が始まる前以来だっけ? 

 天下一品には直営店とフランチャイズがあるが、大半は後者でこの店もそのようす。セントラルキッチン方式なので味は同じかと思いきや、スープの原液を戻す行程が店それぞれあるようで、店舗によって味が異なるというのが通の見解だ。うん。この店、基本的には天一の味だけど、味が塩っ辛くてイマイチかな。ま、久しぶりだからと思いつつ完食。会計をとレシートを見ると、940円。え? 何もトッピングしていないはずだが、よく見るとラーメン単体の値段。値上がり? それにしても、高っ!

 前に食べたときは確か700円台だった記憶がある。その時も一杯600円台の記憶があったので値上げかと思ったが、今回の940円はさすがに割高感が半端ない。もはや、高級ラーメン? 天一は今までも頻繁に値上げがあったようだが、900円以上は許容範囲外。今後は、よっぽど酩酊していない限り無理かなぁ。さらば、天一よ。ま、そうは言っても忘れたころにまた食べちゃうんだろうけれど、その時は1000円を超えているかもしれない。 

 そんなこんなで世の中は値上げラッシュ。光熱費から食料、生活必需品までありとあらゆる値段がどんどん上がってきている。こと、温泉に関しては、まだまだ値上げラッシュの波は押し寄せてきていないように感じるが、燃料費、食材費、リネンなどの雑費など、温泉はダイレクトに値上げの影響を受ける業種でもあるだけに、今後は入浴料を始め宿泊費も値上げの一途をたどるのは目に見えている。交通費やガソリン代のアップも想定できるから、温泉なんて気軽にほいほい行ける時代ではなくなっちゃたりして。

 新宿の昭和チックな飲み屋街「思い出横町」が、近ごろ訪日外国人の占拠状態になっているように、温泉に行っても客はインバウンド客だらけで、ここは日本? なんてことに・・

(温泉呑んべえ)
大衆食堂 at 沼田
 群馬県で最も北にある市である沼田市。市内を利根川が流れ、起伏のある河岸段丘の上に中心街が位置し、高度がある高架を通るこの辺りの風景は、関越自動車道の絶景スポットのひとつだ。
 沼田インターは、四万温泉、沢渡温泉、草津温泉や水上温泉、老神温泉などの有名温泉地への最寄りインターまたは通過インターで、周辺にある温泉も多く、沼田は温泉通にもよく知られている町でもある。
 各温泉地へ向かうときに沼田インターを下りると、ちょうど昼時になることも多い。そんなときに重宝するのが、沼田周辺の大衆食堂だ。大衆食堂は、自分にとっては普段の昼酒スポットでもあるが、車だとそれは叶わない。それでも、大衆食堂好きな自分は、食事だけのときでもついつい大衆食堂を選んでしまう。
 ひと言に大衆食堂といっても、こぢんまりした家族経営、古くからやっている地元密着型地、大箱のものやドライブイン、さらにはファミリー向け、労働者向け、駅前食堂や観光地食堂などなど様々。そんななかで自分の琴線にふれるのは、古くて、渋くて、気がついたらひっそりなくなっているような、それでいてなくなるとガックリくる、そんな郷愁をさそう店。沼田でいうと二軒がそれにあたる。



「花藤食堂」は、ラーメン系食堂の店。民家に無理くりに掲げられたって感じの、どでかいブリキ板にでかでかと「花藤」と書かれた看板が目を引く。



 年月が染み付いたような店内ももそれなりに朽ちていてるが、老夫婦が営むにはちょうどいい佇まい。メニューの短冊がそこそこ掲げられてはいるが、丼物などの食堂メニューの多くには「売り切れ」の紙が上から貼られていたりで、今はラーメンがメインのようだ。



 ビールを頼んでいないのにお通し?ではなく、サービスの前菜?が3種通される、



 とくにプッシュされているのは「きのこラーメン」。ご主人が山で採取するという、天然キノコ6種類のきのこをふんだんにつかったラーメン。大と小があって、大が1280円、小が980円。きのこの量で値段が違う。主人が「スープの味薄くない?」とスープの素ダレを渡してくれるので、薄い場合は追加して自分で調整する。あとは、店内の雰囲気を脳内ブレンドすれば完璧だ。
 食後のデザートにはリンゴ。次に来るときは餃子とチャーハンにしようかな。これからもまだまだ続けていてほしい。


 
「かずのや食堂」は、裏路地に佇む掘っ建て小屋風。年配のあかあさんがひとりで営む。



 扉を開けると縦長に伸びた店内は手前にテーブル席が3卓、奥が座敷になっていてけっこう広く、それなりにきれいに整頓されている。といっても、年期がはいっているには違いないのだが。11時開店直後だと客足は少ないが、昼時に近づくにつれどんどん人が入ってきて、地元民には人気の店のようだ。
 メニューは、焼き肉や野菜炒めなどの定食に丼物、あとはカレーにラーメン、うどんといった王道食堂メニュー。



 ラーメン350円とミニカレーライス250円で600円。ラーメンは昔ながらの中華そば。スープは出汁が効いており、麺もこの手のラーメンによくあるふにゃふにゃ感もなく少しだがコシもある。カレーは小麦粉が強い食堂カレーよりも本格的で、どちらも美味だ。お冷にスプーンが入って出てくる、昭和感がうれしい。



 夏季限定メニューのサラダうどんや冷やし中華もいいが、寒い時期だと冬季限定の「もつ煮定食」がいい。もつ煮は、東京の酒場のようなもつ肉が主ではなく、甘辛く煮た野菜が主のもの。副菜にサラダとひじきがついて600円。旨いな。こちらも、雰囲気スパイスを脳内ブレンドして完璧。



 食べ終わったら、指定の場所(厨房前の食器棚)にセルフで戻す。おかあさんのワンオペなので、お客さんも心得たもの。



 卓上に置かれた箸入れが、おみくじのようだ。当たりはないが、この店自体が大当たり!

(温泉呑んべえ)

 

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