甲府で三杯三湯
 山梨県甲府市。温泉好きにとっては馴染みの街である。甲府には街中に温泉銭湯がたくさんあり、そのどれもが個性的。源泉ぬる湯も楽しめる「新遊亀温泉」「国母温泉」、熱湯の「草津温泉」、ぬるすべの「山口温泉」、ざぶざぶかけ流しで洗い場の洗面器が流れていく「玉川温泉」などなど、一癖も二癖もある湯がそこら中に点在している。今までに何度も訪ねた甲府ではあるが、湯につかって一杯やるには使い勝手のよい街でもある。今回はまず、駅から徒歩十数分の所にある「喜久乃湯温泉」へ。



 外観こそは新しくて、よくある日帰り温泉っぽいが、一歩中に入るとそこは昭和の銭湯。創業は昭和元年。作家・太宰治も通ったという由緒ある銭湯で、泉質はカルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉で、源泉かけ流し。湯船だけでなくカランもシャワーも源泉使用で、源泉風呂もあるガチの温泉銭湯だ。浴槽、洗い場は昔ながらのタイル張り。脱衣所も木製木箱の衣服入れに広告看板も昔のまま。外観からは想像もできない昔ながらの雰囲気のギャップは、使い尽くされた陳腐な表現ではあるが、まさしく「タイムスリップ」感覚だ。


(神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合ホームペジより)

 2階には900円で利用できる大広間があって、飲み物食べ物持ち込み自由。というか、むしろ持ち込んで楽しんでくださいというお言葉通りの寛ぎの間。ここで、日がなのんびりしたいと思う欲求は抑えられない。近所だったら入り浸りかも。



 すぐ近くのバス停「朝日五丁目」から甲府駅を通り過ぎて「中央4丁目」で下車。徒歩5分くらいにある「若奴食堂 中央店」で湯上りの一杯。



 いかにも昼呑みができる佇まい。呑んべえは100%吸い込まれることだろう。



 昼時なので食事の人が多いが、昼呑みに興じる酔客もちらほら。モツ煮と瓶ビールでスタート。といってもこれから先はまだ長い。追加はハイボール一杯にして、小一時間でおいとま。徒歩5分くらいの「都温泉」へ。

 

 昼下がりの温泉。さっぱりとした単純温泉で酒も抜けていく。



 甲府でお手軽に泊まるとなると、まずは茶色いお湯がどばどばかけ流しの「ホテル昭和」が思い浮かぶ。あとは「甲府昭和温泉ホテル」という手もあるが、どちらの湯も熱め。ぬる湯好きにとっては「湯王温泉ホテル」の一択しかない。



 甲府中心街からは、身延線の南甲府駅か甲斐住吉駅から徒歩15分くらいの中途半端な立地条件だけど、街中から伊勢町営業所行きのバスに乗って「住吉一丁目」で降りれば徒歩3分くらいでたどり着ける。バスも1時間に1本はあるので、街中へ呑みにいってこいするには問題ない。ほどよく加熱されたうす茶色の単純温泉。ぬるい源泉風呂でのんびり過ごすのもいいが、酒場がおいでおいでしているので、ひと風呂あびてから街に繰り出した。 



 甲府駅の南エリアには、古くからある飲み屋街がひしめきあっている。



 その一角にある「くさ笛」は昭和39年創業の甲府でも屈指の名酒場だ。



 路地を進むと縄のれん。横に長い出入り口を潜ると、御年83歳のおかみさんが出迎えてくれる。古くからあるので常連客主体の酒場ではあるが、よくあるなあなあな会話はない。親しみのなかにもきちんと距離を保って、それは一見さんにも同じ。だから、誰が訪れても居心地がいい。冷蔵庫に貼られたおかみさんの二十歳代の美人写真を見ていると、泡沫の夢のなかに迷い込んだかのような錯覚に陥る。今宵はここで酔いしれるのだ。



 また来てねという声に送られ、近くのジャズバーで締めの3杯。バスでホテルへ戻って、ぬるい源泉につかって夢から醒めた1日が終わる。



 翌朝は、甲府駅そばの朝7時半からやっている「稲荷屋」で朝食。「のり玉定食」は、最初にここを訪れたときは、ふりかけののり玉かと思ったが、今や定番。ようするに、卵かけご飯に海苔と小針がついた朝ごはんだ。



 甲府にはあと何回訪れるだろうか? 温泉銭湯もいくつかなくなり、飲み屋街も寂しくなっていくばかり。とはいえ、源泉が冷めない限り、夢から醒めることはないだろう。

(温泉呑んべえ)
2023.06.22 05:24 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉旅 | com.gif コメント (0)
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