民宿で温泉
 那須温泉郷は、那須町にある茶臼岳の山腹に散在する、栃木最古の温泉地。かつて、那須十二湯、那須十一湯とも称された時期もあったが廃業などを経て、現在、那須湯本温泉、新那須温泉、大丸温泉、北温泉、八幡温泉、高雄温泉、三斗小屋温泉の7箇所の温泉地を擁する(おおるりグループから経営が代わった高雄温泉については、リニューアルオープン準備中)。そのほか、那須高原には数多くの温泉宿泊施設が点在する、全国有数の温泉郷である。


鹿の湯(公式ホームページより)

 歴史的に一番古い「鹿の湯」があるのが、那須湯本温泉。那須温泉郷のほかの温泉地の多くが一軒宿であるのに対して、宿が密集する温泉街があり、なかでも数が多いのが民宿。民宿といえば、家族経営の小規模の宿泊施設であるが、那須湯本の民宿の大きな特徴は内湯をもたないこと。なかには内湯をもつ宿も数軒あるが、十数軒ある民宿の多くが外の共同湯を利用するという、古き時代の湯治文化の名残りを維持している。


滝の湯

 この地区に3つある共同湯のなかで、有名な「鹿の湯」は日帰り客に人気の共同湯だが、民宿街の中心にある「滝の湯」と少しはずれにある「河原の湯」は、いわゆるジモ泉で、組合員限定でしか入ることができない。しかしながら、民宿も組合に所属しているので、民宿の宿泊客は鍵を借りて自由に入るころができる。つまり、宿に風呂がないので内湯が外湯という、きわめて合理的な仕組みになっている。


河原の湯

 泉質は基本的に硫黄泉だが源泉が違い、滝の湯が「御所の湯」、河原の湯が「行人の湯」、鹿の湯が「鹿の湯」と「行人の湯」の混合泉で、すべてかけ流し。泉温は、鹿の湯が41度~48度までの6つの湯船(女湯は48度はなし)、滝の湯と河原の湯は、42度から44度ほどに入浴者によって自主調整された、「熱つめ」と「ぬるめ」の2つの湯船がある。そしてそのどれもが、古く鄙びた共同湯の佇まい。ありきたりな温泉宿に慣れていると、こういった昔ながらの湯治スタイルや雰囲気が、新鮮に感じられる。
 さて、那須湯本の民宿泊、さらに翌日は秘湯の宿、そして翌々日はプチリゾート温泉と、栃木県内の温泉宿を泊り歩いたのであるが、それはいずれ当サイトの「温泉雑話」に掲載するつもり。

(温泉呑んべえ)
猿ヶ京なのに猿がない
 猿ヶ京温泉。、群馬県のみなかみ町にある温泉地。三国街道沿い、ダム湖赤谷湖のほとりに旅館やホテル、民宿が点在する温泉地である。
 戦国武将、上杉謙信がこの地をおさめ、ある晩、縁起の良い夢を見た日が唐申の年、申の月、申の日であり、謙信地震の生まれ年も申年だったことから、「この地を申ヶ今日」とするとなり、「申ヶ今日」が「猿ヶ京」と呼ばれるようになっという逸話が残っている。
 猿である。
 実際このあたりに野猿は生息していて、たまに道路脇で見かけることも。そんな猿ヶ京温泉に2010年、手湯が3箇所設置された。

「河童の湯」




「いたちの湯」




「きつねの湯」




 で、なんで「猿の湯」がないんやー。

(温泉呑んべえ)
酔っ払いはピンク色
 

 温泉と酒場は同意語に等しい。どちらも「ええ気分」という意味で。
 そんなわけで夜な夜なというか、昼な昼なというか、日々呑み歩いているわけだが、達人会のメンバーとも呑み助をロックオンして呑みに行くこともしばしば。で、今宵は都内屈指のピンク色のラブホ街を擁する、鶯谷にくりだした。
 


 メンツは、会の青年部?、お銀さんと助さん格さんとの計4人。ナニこれの水戸黄門だが、まあ違和感はない。日本全国を温泉行脚する強者たちだからね。
 まずはお銀さんと先行で「鍵屋」へ。ここは女性のみお断りを未だに堅持している古典酒場。元々は、女だけでいると周囲の男がちょっかいだしたり、それが元で男客同士が揉めたりと、いろいろ面倒なのでできた昔の酒場のしきたりみたいなものだが、今やめったにお目にかかれなくなった。でも、こういう古典酒場を好む女性陣もわきまえたもので、それを踏まえ男女一緒で粋を楽しむ稀有な場所でもある。



 凛とした雰囲気の中で徳利を傾けているうちに、助さん格さんも鶯谷入りし、河岸を変えて「ささのや」へ。駅そばの陸橋沿いにある焼き鳥屋で、1本80円(最近10円値上がりしたようだ)。店内のテーブル席でも呑めるが、ここは店外の立ちで呑むのが通。もくもくとあがる焼き鳥の煙を浴びながら(さらに道ゆく人の視線も浴びながら)、焼きあがった焼き鳥をセルフで皿に盛って、夜の空気にあたりながらグイグイ呑む。ここまでいけば、いっぱしの呑んべえといってもいいだろう。
 鶯谷といえば、都内屈指のラブホ街ではあるが、安く呑める大衆酒場もあって、なぜだかお忍びカップルよりも酔っ払いのほうが幅をきかせている。この店も立地的にはラブホ地域だが、エロエロというよりはベロベロという言葉がふさわしい。



 で、ラブホ街に突入する。まあ、ある程度の年齢を重ねると、こういうピンクな雰囲気も鈍感になるもので、我が物顔で奥に進み、ちょっと怪しい感じの中華屋「東瀛 (とうえい)」へ。ここは朝の9時からやっているので、朝呑み、昼呑みなんでもござれで、安くて旨いとあって夜呑みにも重宝する。ビルの上にはきれいなおねいさんが、体も心もほぐしてくれるマッサージ屋もありいの、客もこの街さながらな雰囲気を醸し出している、鶯谷呑みでははずせないラブ町中華だ。



 このあたりまでくると、皆が完全に酔っ払いなので、何を話しているのか、何を呑んでいるのかが曖昧になる時間帯。達人会ってどうよ、なんてちょっと危ない話などを持ちだしたりして、有意義なのか無駄なかわからない時間が過ぎていき、もう10時過ぎか。ラブホ街の中にある裏口から出て、さあ、締めでもう一軒行こう。



 鶯谷駅前の迷店「信濃路」。もともと立ち食い蕎麦屋と呑み屋が合体したような酒場で、かつては都内に蒲田、平和島、大森、そしてここ鶯谷と4店舗あったが、今や蒲田と鶯谷だけになってしまった。安くて、酒のつまみメニューが充実していて、蕎麦やカレーなどの締めものもあって、24時間営業でいつ行っても重宝したものだが、コロナ禍以降は23時まで。入って左がカウンター、右がテーブル席だが、テーブルがいっぱいだったので左へ。
 いつもはほぼひとり客用のカウンター席を、貸切状態で立ち飲み。入店と同時にラストオーダー宣言を受け、酒とつまみを怒涛のように注文したあげく皆が酩酊、散開とあいなった。
 そんで、何が言いたいかといえば、温泉も酒場も、どちらも「ええ気分」。

(温泉呑んべえ)
伊東に行くなら「○○○!」
 伊東にゆくなら「○○○!、でんわはヨイフロ」。伊東を思い浮かべると条件反射のごとく、昔テレビCMで流れていたこのフレーズが頭のなかに流れれてしまう世代ではあるが、にもかかわらず、伊東に行ってもこのホテルを訪れたことは未だない。
 伊東といえば伊豆半島屈指の温泉地。源泉数780本、湧出量も毎分34,000リットルで、どちらも国内第3位を誇る。にもかかわらず、近郊にある箱根、熱海、湯河原、修善寺などの有名温泉地の陰に隠れて、いまひとつパッとしない温泉地でもある。
 自分もかつては伊豆に行っても素通りしてしまうことが多かったが、街全体がこぢんまりしていて、飲食店も一通り揃っている。海が近くて釣りもできるし、海鮮物も豊富で旨い。なにより、7箇所の共同湯をじはじめ、源泉50度前後で豊富な湯量の温泉がわいていて、かけ流しが基本。電車でも車でも東京からサクッと行けちゃうとあって、近ごろわりと訪れるようになってしまった。


K'sゲストハウス

 これまで「山喜旅館」や「K'sゲストハウス」などに泊まって、夜は街に繰り出すという地元堪能型で楽しんできたが、昨年「山喜旅館」が廃業してしまい、あのぬる〜い湯がもう入れないのかと思うと悲しい。



 で、今回は「南伊豆駅」から徒歩5分くらいの所にある旅館に、連泊することにした。


 
 お風呂は露天風呂、大内風呂、小露天風呂、小内風呂の4箇所あって、そのどれもが貸切で利用する。単純温泉のかけ流しで、泉質は単純温泉。湯温はだいたい41度弱から42度強くらいで湯船によって異なる。
 広いお風呂をひとりで入れるなんてすこぶる気持ちいいし、客室も多くはないのでいつでもあぶれることもない。館内もリニューアルされてきれいに整っているし、持ち込み自由なので共同ではあるが冷蔵庫もあって、冷えたビールも自前で呑める。中心街からは少々離れてはいるものの、徒歩20分くらいで行け、酒場巡りにも不便しないので、文句のつけようがない。



 4箇所のお風呂とビールとを繰り返しているうちに日も暮れて、宿から歩いて10分くらいの所にある共同湯「小川布袋の湯」でひと風呂。伊東にある共同湯のなかでも一番小さく、一番ぬるい。4、5人でいっぱいになるくらいの小ぶりの湯船だけど、近所の人以外は訪れる人が少ないのであまり混まなくて、のんびりできて、伊東の共同湯で一番好きな湯でもある。



 湯上りは近くの手打ち蕎麦屋「手打庵」で軽く一杯して、帰りがけに町中華「赤のれん」でしゅうまいとビールで締め。



 翌日の朝風呂は内湯の大きいほうで、朝の光が心地よい。



 ここの宿は夕食プランはなくて、朝食付きか素泊まりだけ。でも、素泊まりと朝食付きの差額は500円。しかもけっこう豪華なメニューとあって、朝食をつけない手はない。
 午前中は宿のお風呂でうだうだ過ごし、昼に駅近くの「梅屋旅館」に立ち寄り。



 44度強の熱湯のかけ流し。ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉。熱い湯にのぼせて10分ともたず。さて、ビールだ。
 そういえば、前にこの界隈の場末な呑み屋で呑んだことがある。おかあさんはその当時86歳で、パソコン歴4年なのに株で小金稼ぎをするし、北海道の土地が中国人に買い荒らされているのを危惧するほどの情報通。コロナなんて戦時中を思えば怖くはないと笑う、かいらしいばあちゃんだった。ビール1本とつまみ1品で小一時間二人っきりで話して、会計は700円くらいだ。あの店、どこだっけ? 昼間なので開いてはいないけど、どこだったかわからない。もうやめちゃったのかな。



 海岸通から少し入ったところにある、ひっそりとしたお食事処。招き猫が日向ぼっこしている。扉を開けるとすぐに階段があって2階へ。窓ぎわに席をとって、ぼーっと外を眺めていると、おばあちゃんが料理とビールを持って上がってきた。



 夜はそこそこの値段はするが、昼には、刺盛り、煮魚、さざえのつぼ焼き、それにご飯と味噌汁、お漬物がついた「ランチ」2000円で一杯できる。外観がボロ屋なので観光客はこないし、ここで一杯するのが伊東の昼の定番だ。



 そういえば、会報2022の特集「難易度高めの温泉」にも載せた「源氏湯」。空いている時間が2時間くらいという、限りなくジモ泉のような温泉銭湯がどうなっているかを見にいってみた。張り紙などはなかったが、やっているようには見えなかった。やはり廃業してしまった? 1日の集客が数人程度じゃしかたなかったのかな。



 午後は宿のお風呂とビール。夜は南伊東駅近くの「鎌田福禄寿の湯」へ。単純温泉で、伊東の共同湯のなかでもかなり熱く、5分ともたなかった。番台のおばちゃん、「みんな熱いのが好きだから」だそうで、ぬる目の「小川布袋の湯」とはそれほど離れてはいないが、伊東市民は7箇所あるうちの好みの共同湯にあつまっているのであろう。近くの居酒屋「開山荘」で一杯して宿に戻る。
 翌朝は、仕事が待っているのですぐに帰路へ。次回は釣りがてら訪れよう。
 てなわけで、「伊東に行くなら○○○!」の「○○○」は、自分なりに書き換わっているわけで・・・

(温泉呑んべえ)
時刻表ミュージアム
 東京、中央線中野駅前の風景も随分と変わった。以前の開放感ある北口ロータリーは陸橋ができたりして窮屈な感じになったが、中野のもつ都会と庶民的がいい感じに混ざった空気は以前のままだ。サンロード商店街を通り、今やアキバを凌ぐサブカルの聖地ブロードウェイを抜けて、道沿いをしばし歩くと「時刻表ミュージアム」がある。



 時刻表ミュージアムは、当会の会員である鈴木哲也さんが、子供のころからかかさず買い続けたJTB時刻表をメインに展示する、自宅併設で開館している私設博物館。今や、マニアックな中野にふさわしい、通好みのスポットとして知られている。そこに、達人会のメンバー三人(タカオジさん、ゆおじさん、すーさん)とともに訪れた。ちなみにJTB時刻表とは、全国の鉄道を始めとした公共交通機関のの時刻表を掲載した、1925年よりから発刊されている月刊誌である。



 入場切符には、改札鋏で入場者自らがパンチを入れる。



 自宅の一室を利用したといえど、何?この本格的資料館の雰囲気。



 816冊(今現在)の時刻表を始め、数々の鉄道アイテム、グッズや資料に関連書籍が、所狭しと展示されている。



 鈴木館長(車掌長)から展示内容や開館への思いなどを訊きながら、様々な展示物を観てまわり、ジオラマのなか走る列車を眺めているうちにあっというまの一時間。



 鉄ちゃん(鉄マニア)なら垂涎ものだし、鉄ちゃんじゃない自分にとってもとても楽しめた。公式ホームペジから申し込めば、完全予約制で観覧できる。


鈴木館長

「時刻表ミュージアム」ホームページ

 中野まで来てそのまま帰れるわけわない。中野には都内でも屈指の呑み屋街がある。かつて中野に住んでいたころによく訪れた「ブリック」。1951年創業の俗にいうトリスバーで、中野には1964年から店を構えていた老舗バー。背筋がピンとしたバーデンダーが物静かにカウンターに立ち、客もそれに見合った呑み方をする、大人の場所だったここも諸事情で2022年4月に閉店。自分もその報にショックを覚えたものだが、なんと復活しているではないか。



 元オーナーが以前の雰囲気を壊さないという条件で代替わりという。前よりも明るい照明、カジュアルな雰囲気。料理メニューも増えたが、名物のトリハイの値段は以前と変わらずリーズナブルに提供されている。久しぶりのブッリックは、やや居酒屋ノリには馴染めなかったが、懐かしいひとときをしばし過ごせた。今思えば、ブッリックと双璧をなした中野の伝説級の喫茶店「クラシック」も、残して欲しかったものだ。

(温泉呑んべえ)
何十年ぶりかの浅草演芸
 

 当会の元会員でもある、いなせ家半七師匠が、「浅草演芸ホール」にかかっている「五代目 春風亭柳朝 三十三回忌追善興行」に出演するので行ってみた。浅草で演芸鑑賞なんて、何十年ぶりだろうか。半七さんは、五代目 春風亭柳朝師匠のお弟子さんだったということで、当日は柳朝師匠ゆかりの演者が二十数人、時間も朝11時40分から夕方の16時半までみっちり演じる。



 浅草といえば、昼呑みスポットでもある。午後3時。さすがに三時間も観続けていると、心はすでに呑みモードにシフト。仲入りで離脱して近くにある「水口食堂」へ。



 正式には、食事処・酒肴「水口」が店名なのだが、水口食堂が通り名として定着している。食堂という名ではあるが、実際のところは呑んべえの巣窟。朝10時から開いているので、浅草界隈の昼呑みの聖地でもある。浅草には「神谷バー」やホッピー通りなどもあって、昼呑みにはことかかない。



 まずは、赤星と湯豆腐でひと息。一時間半ばかりうだうだ呑んで、そろそろ寄席も終演の時間か。自分にとっての仲入り後は、酒演といったわけだ。

 
 
 浅草の中心街から少し離れた裏道にある「シナノヤ」。いわゆる角打ちってやつ。浅草で角打ちといえば、創業130年の酒屋「四方酒店」で何度か呑んだことはあるが、ここは初めて。店の中というか、隅に倉庫の片隅といった雰囲気の呑み所があって、隠れて呑んでいるような妙な背徳感がある。

 

  角ハイボール(350ml缶)で、しばし。さて、帰ろうかと駅までの道すがら、ええ感じの中華屋がある。

 

「生駒軒」。見るからにこれぞ地元密着型の町中華といった店構え。思わず吸い込まれて、餃子にビール中瓶。

 

 今度こその帰り道、そういえばあそこはどうなってるのだろうと「浅草地下街」をのぞいてみたら、雰囲気はあいかわらずのディープスポット。ただ、何度か呑んだ「おにぎり酒処 たんぼ」や「亀寿司」、そのほか怪しい雰囲気のタイ料理屋をはじめ、何店かがなくなっていたり、別の店に様変わりしていた。どうやら、ここも新宿のゴールデン街や思い出横丁と同じく、若い世代のオーナーが店開きしているようだ。古い店がなくなっていくのは寂しい気もするが、こうして昔ながらの雰囲気が残っていくのはうれしい。
 なんせ、1955年から当時の姿で生き延びているのだから。

(温泉呑んべえ)
酒場with温泉(仙台)


 東北地方の温泉旅に行くとき、東京への帰路で仙台を通る場合は、途中下車をして必ず寄る酒場がある。その名は「源氏」。仙台のみならず名が知られる名酒場である。
 路地奥にひっそりとあるその酒場は落ち着いた木調で、電球色の灯りがうっすらとともる店内はそれほど広くはなく、詰めて20人ほどが座れるコの字カウンターのみ。口開け前から人が並び、およそ20人くらいが並んでいれば、一時間くらいは待たなければ呑めない。
 お酒はビールと日本酒が四種類のみ。日本酒はひとり4杯までで、まず漬物が供され、1杯ずつに酒のつまみが付く。1杯目は酢の物、2杯目がやっこ豆腐。3杯目が刺身の小皿、そして4杯目がおでんかみそ汁となる。日本酒1杯が900から1100円なので、3杯呑むとだいたい3000円くらい。
 まさしく大人の隠れ家的酒場の源氏であったが、ネット情報があふれてもはや隠れてはいない。年配の常連さんが多かった客層も、近ごろは若い人が増え、そのぶん騒がしくなって(元気ともいう)、以前の凛とした雰囲気はなくなってきている。まあ、自分も若かったときもあるので文句などないが、この雰囲気を守っていくのも次世代の呑んべえである若人の努めだ。
 それでも、いつ訪れてもテキパキとしきる着物姿が艶やかなおかみさんがいる限り、この酒場は安泰にちがいない。

(温泉呑んべえ)
山形最古の佇まい
 山形県内に現存する最古の旅館建築物といわれる、瀬見温泉「喜至楼」に泊まる。いかにも保存してますって感じじゃない、旬な雰囲気。いいです。
 


 部屋は昔ながらの本館の角部屋。これはくつろげそうだ。



 明治元年の雰囲気を残す本館玄関、薄暗い廊下や階段、タイル張りの洗面所、鄙び感漂う炊事場などなど、館内は随所に古めかしさがにじみ出た造りが点在している。



 風呂は円形のローマ式千人風呂、併設のあたたまり湯、別館浴場。貸切風呂もあるが、今はお湯がたまっていない。


(公式ホームページより)

 外湯は共同湯の「せみの湯」。とりたてて特徴はないけど、一応ね。あとは、川沿いに「薬研湯」がある。こちらは対岸から丸見えの「難易度高めの温泉」だ。せっかくなのでいきおいで入ったが、お湯が熱いところと冷たいところが混在していて、肩までつかれる場所がほぼなかったので、寝そべるようにとりあえず湯につかって速攻で離脱。



 夕食なしにしたので、上野駅で買ってきた惣菜をつまみにして部屋でのんびり。これはこれで酒呑みにはいいもんだ。



(温泉呑んべえ)



2023.02.02 18:17 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉宿 | com.gif コメント (0)
素通り絶品ラーメン
 茨城県水戸市から会津若松市に至る国道118号線は、二岐温泉や岩瀬湯本温泉に向かうときに通る、主要幹線道路だ。国道から二岐温泉に向かう分岐から西に車で10分ほどの場所に、ポツンと1軒の食堂がある。それが「羽鳥食堂」。



 ほとんどの人が素通りをし、それが食堂があることもわからないほどの地味な佇まい。そんな空気のような食堂、でもそういう地味さがたまらない人種にとっては、目をとめざるをえない雰囲気を醸し出している。
 二岐温泉に行く道で見つけ、帰りには必ず立ち寄ろうと心に決めた。今、食事すると宿での夕食に差し支えるので、後ろ髪をひかれる思いで「大丸あすなろ荘」へ向う。明日、やってるかな? やってるといいのだが・・ そんな思いを胸に温泉につかるのもどうかと思うが、温泉旅の醍醐味はなにも湯だけではない。こういう自分なりのオプションが格別でもあるのだ。



 翌日、チェックアウトを済ませ帰路につく。前方には赤い幟が見え、車を店の手前の路肩に停める。時間は午前10時半をすぎたあたり。ちょうど店主らしき人が出てきて、暖簾をかけた。やった! 店内はそう広くはないが、四人がけのテーブルが何卓か並んでいて、安普請だけど掃除もわりと行き届いている。食堂メニューがいくつか並んでいるけれど、店主はラーメンならできますとポツリ。



 ラーメンで十分だ。なにせ今朝は宿でそこそこ豪勢な朝食をとってまだ間もない。お腹はまだ空いていいるわけでもないが、どうしてもここで食事がしたかったので、ラーメンくらいしか無理かもしれない。店内の奥には薪ストーブが鎮座してて、そのうえに鍋があり、どうやらここでラーメーンスープを温めているようだ。



 ほどなく提供されたラーメンは、いたってシンプル。でも、見るからによくある食堂の醤油ラーメンではない。スープを口に含むと濃厚な味わい。豚こつ? いや、それほど臭みはないが、店主に聞くと鳥こつ醤油という。なるほど、すっきりとしたうえに濃い味わいが中太ちじれ麺にからんで、これは旨い。まさか、こんなところでこんな旨いラーメンに出くわすとは思わなかった。



 ごちさそうさまでした。店主とひと時世間話をしておいとま。食べログにも載ってない店だけど、Googleマップの口コミにはこんなコメントが残っていた。「日本一まずい。買ってきた喜多方ラーメンに魚醤油を使ったというラーメン」。そうなのか? 喜多方ラーメンだと醤油系なんだけど?? 味覚は人それぞれだが、こうも感想が違うとは。それとも自分がバカ舌なのか・・・ まあ、仮にそうだっとしても自分が美味しいと思えたなら、それはそれでいい。なにせ、こういったジミ系の食堂が大好きなのだから。

(温泉呑んべえ)
ぶらっと温泉
 ふと、または、いきなり、はたまた、ぶらっと温泉に行きたい瞬間がある。そんなときに閑だったら、気力と体力があったら、二日酔いでなかったら、行っちゃうしょ温泉へ。そういうことで近場でさくっと行けそうな温泉を探して、前日予約で温泉へ向かった。
 自宅からは車で軽く行けば着くような温泉は、東京近郊にはそう多くはない。そりゃ箱根まで行けばなんとかなるし、ちょっと足を伸ばせば伊豆だってあるが、そういう感じじゃない。そう、ぶらっと行くにはそれなりの作法もある。
 まず、いきなりでも予約が取れる、そんなに客がいるわけでもない、意気込んで泊まるほどの宿でもない。そう、言って見れば「ジミ泉」がちょうどいい。
 


 そんなわけで、七沢温泉「福元館」。ドアtoドアで約一時間半。ひとり泊は食事付きを受け付けていないようなので、素泊まり。安政年間1856年創業で、作家の小林多喜二氏が昭和6年に逗留し、小説『オルグ』を執筆した当時の部屋もあるという、由緒ある?宿だが、自分的にはジミ泉の範疇だ。



 お風呂は小ぶりの内湯と露天風呂、それに大浴場ともども男女入れ替え制。pH9.90で強アルカリ性ということだが、それ、普通のアルカリ性ではないのかい。ま、いいか。



 風呂上がりは部屋でビール、ビール、ビール。近ごろは布団が予め強いてあるので、すぐにゴロンだ。



 夕食は10分ほど歩いて寿司屋へ。完全呑みモードに突入。



 翌朝はアヒルさんが鎮座する大浴場で、チェックアウトまで過ごす。



 帰りに大衆食堂で昼食。その名は「キリン食堂」。名前だけでもそそられるのに、この外観、たまりません。



メニューには丼物、麺類、ほか野菜炒めなどの一品が数点。ビールは当然のごとくキリン。しかし、車なので呑めない。ハムエッグで一杯してーっ。



ここは、我慢のまんまるオムライス。

(温泉呑んべえ)
2023.01.15 19:33 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉宿 | com.gif コメント (0)

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